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回さけぶ会  俳句モードとは何か                   

 今回の出席は男性6名、女性2名の計8名である。

この「さけぶ会」への先生のご出席が隔月になったので、前回の「さけぶ会」でペンディング事項をお聞きしようと満を持していた行人さんがまず口火を切る。

◇行人さんの叫び
・句会において、漢字が読めない難しいという意見があります。読んでもらえなかったら、取り上げてもらえないので、句会の場合、当用漢字以外はルビを振っても良いのではないでしょうか。

先生からは次のようなアドバイスがあった。

ビを振るかどうかの基準はないし、これという決め手はない。俳句では「義母」を「はは」とルビを振ったり、「義父」を「ちち」とルビを振ったりするのが一般的であるが、俳句に親しんでくるとルビがなくてもそう読む。難しい文字をこう読んでもらいたいとの思いで、ルビを振ったりすることあるが、その言葉自体が難解であれば、読者には理解が進まないであろう。

私の句づくりの基本はできる限りルビを振らないことである。そのため、平易な表記、平易な作品づくりに心がけている。皆さんもそう心掛けてほしい。

◇筆者(加壽)の叫び

本日の句会の兼題は「能」であった。その能に関する句について、先生から筆者(加壽)の句が取り上げられた。

  千枚の影映しをり能登の月

 この句の情景について、参加者から口々に話があった。ある者は、田圃に水が張ってあり、その水に月が映っている情景を思い描いていた。それに対して、月を愛でる季節では、既に水は張っていない状態なのでその解釈は不自然だとの指摘があった。そうでなければ、棚田の畦の影ではないかとの指摘があった。

実は、筆者としては、情景を確定させず、ファジーに表現した方が味わいや余韻が残るのではないかと思ったのだが…。

句友からは、次のように表現してみたらどうかとのアドバイスがあった。

  千枚の苅田睡らせ能登の月

童話的な雰囲気を醸し出しており、なかなかよい。

先生から、師倉田紘文の〈次の田に畦の影ある冬田かな〉の句が紹介され、話は一気に動いた。

 これを聞いていた句友は、

  千枚の影段々に能登の月

とアドバイス。しばらく参加者の声を聞いていた先生からは、

  千枚の田ごとに影や能登の月

とのアドバイスがあり、この件は一件落着した。ファジーな句で思わせぶりな句はよくないと教えられた時間であった。

◇文雄さんの叫び

今日の句の自信作が誰もとってくれなかった。なぜ理解してもらえないのかという叫びである。句は次のようなもの。

   能俳の赤き埋火白寿呼ぶ

まず「能俳」の言葉が理解できなかったので、その段階でパスした、と語る参加者。

 作者曰く、能を舞われ、俳句を詠まれる穴井梨影女さん。その梨影女さんが「埋火」という素晴らしい句文集を出版された。尊敬の念をこめ、それを詠みたかったとのこと。具体的には、「能俳」とは「能」と「俳句」、「埋火」は句文集名、「白寿」は今年94歳になられ、白寿が間近であるとの意味であったとのこと。

 それを聞いていた先生は、作者の思いはわかった。その心根は大事であるが、原句では言葉を詰め込み過ぎ。核心部分を抜き出し、思いをこめて表現してほしいものとのアドバイスがあり、次の句を示された。

埋火のごとくに女能を舞ふ

 作者はもちろんのこと、一同納得のようす。 

◇雅子さんの叫び

 今日の句会の中で、何人かの入選に入っていた次の句についての叫びである。

      無花果の熟れて太古のかをりかな

 合評の際、作者の思いを述べることを求められた雅子さんは、「無花果は太古からの果物であるという」説明をした。先生は、その言葉は、無花果の由来を述べたものであり、俳句は説明的であってはならなないので、その解釈は聞かなかったことにしたいとおっしゃった。その意図するところが理解できなかったとの叫びである。

先生からは、次のようなアドバイスがあった。

俳句は対象物の報告や説明をする文芸ではない。いろいろな言い方はあるかもしれないが、気配を詠む文芸であると考えている。この句のすぐれたところは、その気配を感じさせるところにある。無花果の熟れる際の匂いには、太古を感じさせる気配が漂っているものと解釈したい。

◇行人さんの叫び

最後に行人さんからの叫びとして「俳句モードになるためにはどうすればよいか」との叫びがあった。

先生は、波多野爽波の「俳句スポーツ説」の例にあげ、アドバイス。〈「俳句スポーツ説」は、例えば「写生」の一事をとってみても、これをスポーツの練習をつむがごとく、ものに即して反射的に対応できるような己が「体力づくり」と割り切って実行すること。

これを実践することも俳句モードになる一つであろう。

俳句モードになるためには、自分を追い込むことがキーワードであろう。句会では投句締切間際が大事である。集中力を高め、瞬発力を高める努力も必要である。 

                            以上 加壽・記

     


 今回のレポートは、管理人の加壽がまとめさせていただいた。何事もやってみなければ分からない。素晴らしい学びをいただきながらメモがなかなか繋がらない。
 俳句のみならず文章までもファジーな自分の欠点が露呈した。
 幸い、先生にご出席いただいていたので加筆修正をお願いした。今月もありがたい貴重なレポートをお届けします。(HP管理者・加壽)